【つながりびと03】飯田 梓さん

『アライである私の原点は、母の働く憧れの女性像』

私が飯田さんと出会ったのは、LGBTQコミュニティの場であった。飯田さんはアライとして参加されていた。その出会いがきっかけで私のブログを見てくださり、飯田さんの卒業論文にご協力をさせてもらうことに。インタビューを通して新たに気づく自分の一面や発見もあり、アライとしての飯田さんのご意見がとても新鮮で貴重なものになった。飯田さんがジェンダーに興味を持ったきっかけは、働くお母さんの存在だったとのこと。アライとしてのLGBTへの関わり合いや考え、卒業論文についてインタビューをしました。/【後日談】飯田さんの卒業論文が大学の優秀論文に選出されました。優秀論文をまとめた雑誌に要旨が掲載されます(6月頃発行予定)。私の経験がこうして誰かの役に立ち社会に残すことができたことに感謝をいたします。

 

飯田 梓 さん
2000年、九州生まれ。働く母の姿への憧れや、高校での厳しい校則に疑問を持った経験から社会学に関心を持つ。大学では社会学専攻に所属し、ジェンダーやセクシュアリティを中心に学んでいる。大学卒業後は大学院に進学予定。

Q大学で社会学の「ジェンダー」を専攻し、卒業論文で「LGBT」に関することをテーマにされています。そもそもなぜ、ジェンダーやLGBTに興味を持ったか?その辺りを教えてください。

・小さい頃から社会への関心は強い方でした。両親は共働きだったので、いわゆる鍵っ子でした。母親が働いていたことに対しては誇りに思っていました。家に帰って母親がいるよりも働いて欲しい、働いている女性=カッコイイ、それが私のかっこいい母親像でした。ただ、今となっては母に、私の理想の母親像を押しつけすぎていたなぁと申し訳なく思っています(苦笑)

・だから中学校で自分の将来を考えた時に、結婚して子供を産んでも働きたい、仕事も家庭も両立できるような、まさに母親のような女性になりたいと思うようになりました。

・けれどもニュースなどを見ると、女性がキャリアを持ちながら家庭を持つのは、男性がそれをするのよりも難しい話題が多い…。女性がもっと働きやすくなって欲しいと考えたのが、ジェンダーへの関心のきっかけでした。

・その後、ジェンダーや労働・働き方について学べる大学に行きたいと思い、現在の大学に進学しました。

Q:ジェンダーに興味を持ったきっかけはお母さんだったということですね。素敵なお話ですね。お母様が働いていることは寂しくなかったですか?

・母親は私が幼少期に大学にも通っていたこともあり、母親とべったりという感じではなく、母が仕事のときは、祖父母や親戚の家に預けられ、色んな人に面倒を見てもらったという思い出があります。民間の子育てサービスに登録されているご家庭に夜まで預けられるということも数回あったと思います。

・寂しかったということは全然なく、私は反対に楽しむタイプでした。色んな人に面倒を見てもらい、けれども母との時間もあり、不満ということはなかったんですよね。

― お母様は少ない時間の中でも飯田さんとの時間を楽しむように努力されていたんですね。私も親戚の家に行き来しながら育ったタイプなので、色んな人に育ててもらう経験が良かったというのは同感です。

Q:大学に進学されて、セクシャルマイノリティの当事者の友達ができたとお聞きしましたが…セクシャリティへの関心はいつ頃からでしたか?

・私の学校の校則はとても厳しくて、当時冬のセーラー服の寒さ対策に要望があったのにも関わらず、制服に関する些細なことまでも頑として変わりませんでした。

・セーラー服の寒さ対策としての校則さえ変わらなかったとき、今着ている制服が自分に合わない(本当はスカートやスラックスを履きたい)と思っている人々にとっては「こんな些細な校則も変わらないなら、自分が着たい制服を着られる日が来るわけない」という絶望に近い気持ちなのではないか、と想像しました。

・セクシャルマイノリティの方にはどんな方がいて、どんな悩みがあるのかは耳にしていました。制服の一件がそれまでよりいっそうセクシャルマイノリティへの関心が強くなったきっかけでした。

・大学1年の早い段階で当事者の友達に出会いました。自分のセクシャリティを打ち明けてくれた友人に対して「私は自分のことをアライだと思っているから、色々話そうね」と仲良くなったんです。

・その友人に出会う前からTsunagary Cafe(LGBTQのコミュニティ)に参加していたんです。当時大学が大阪だったこともあって、大阪で「LGBT コミュニティ サークル」といった感じで検索してみたら、Tsunagary Cafeを見つけたという感じです。セクシャリティが何であり、皆が皆のことを認め合い、安心して色んな話ができる環境が私自身とても居心地が良かったんです。

― Tsunagary Cafeは飯田さんと私が出会い、卒業論文をお手伝いさせていただくきっかけとなったコミュニティですね。ここ数年でLGBTは注目され、情報やコミュニティも増え、カミングアウトする人も出て来ましたよね。

Q:飯田さんぐらいの世代である10代~20代の方は、LGBTをどんな感じで捉えているのでしょうか?

・当事者の友人と私は同じコミュニティにいるのですが、そのコミュニティの中では友人はフランクに自分の話をするし、周りも理解してフレンドリーに受け入れています。

・けれども、他のどのコミュニティでも同じようかと言えばそうではやはりないですね。当事者の人がいないコミュニティだと、そもそもLGBTについて話題になることも少ないと思います。

・LGBTというと、生き方やアイデンティティではなく、社会問題という少しかしこまったイメージが若者の中であるかもしれないですね…。

― 理解しれくれている人がいる環境だとカミングアウトはしやすいけど、どこでもオープンにするということは難しいですもんね。けれど、飯田さんのように理解してくれる人がいる、コミュニティがあるということで、誰かに話すことはできるという点では、昔と比べると良くはなったんだなと感じます。

Q:卒業論文の話に移ります。私もインタビューでご協力をさせていただきましたが、私のブログを見ていただいた第一印象はどうでしたか?

・せいこさんのブログは悩んだことや苦しかったことなど、今までの経験を細かくリアルに感情も書かれていたから、すごく伝わって来るものがありました。今までどんな思いをしていたか、どんな感情だったか、どんな生き方をしていたか、こういうことを発信する人やブログが増えたらいいなと思いましたね。

・なぜなら、私は地方出身ですが、地方にいると情報格差もあるし、校則もしかり考え方もまだまだ古くて、当事者はカミングアウトしづらい環境だと感じます。地方に住んでいるセクシャルマイノリティの方が、ブログを見て、自分と同じようないる人への共感だったり、同じ経験をしている人がどんな風に生きているか、悩みが晴れていく気づきの場になると思うんです。

― ありがとうございます、すごく嬉しいご意見です。当事者にはカミングアウトしてさらにパートナーもいるという人もいます。けれども、実際には自分の性が分からない、人に言えず悩んでいるといった、悩み渦中にいる人の方が圧倒的に多いと感じています。だから苦しんでいる方々に向けて、私の経験が気づきや道しるべになればと思っています。

Q:卒業論文では「同性に恋愛感情を抱く当事者がどのようにして自己形成をしていったか」に焦点を当てていらっしゃいます。卒論のテーマを選んだ理由は?

・今までLGBTについてはどんな研究がされているかを見ると、トランスジェンダーの研究は多かったんです。他にはカミングアウトについて、同性同士のカップルの焦点を当てたものなど。

・私は性的指向に焦点を当て、同性に恋愛感情を抱く人達が、自分のセクシャリティに気づき、アイデンティティを築くまでの過程を明らかにしたいと思いました。

・その人自身の人生、どんな経験をしてどう生きて今に至るのかということにはあまり注目をされて来ませんでした。私自身が人の人生とかに興味があるタイプということもありますが(笑)

・教育の分野でどうやってセクシャルマイノリティについて教えていくか、情報に偏りがあると思いますし、異性愛以外の恋愛についてはクローズアップされてこなかったと思います。

― すごい視点ですよね。けれど現在では、小学校・中高でもLGBTを授業で取り上げられていて、随分変わって来ましたね。

Q:卒論を書き終えての気づき、考えたことはありますか?

・‟異性愛が普通”という感えがとても強いんだな…と改めて気づかされました。異性者が思っているだけでなく、同性に恋愛感情を持っている人も同じように思っているということ。だからこそ苦しく感じ、セクシャルマイノリティと気づいた後も異性愛への執着みたいなものがあって、異性愛を頑張ってしようとするという実態も今回の研究で見られました。

・昨年公開された映画『彼女の好きなものは』を見て、卒業論文を通して感じたことと同じことを感じました。ゲイの男の子とBL好きの女の子が普通の男女として付き合う物語です。

・自分が同性を好きになる感情と、普通になりたいという感情、そこって相容れないところがあると思います。だからこそ、同性が好きな自分を受け入れるまでに、相当の時間や段階があると痛感しました…。

― 確かに当事者にとってセクシャリティについて受け入れるという部分が最も大きな砦だと思うんですね。普通になりたいとはそうですね。なかなか相手が見つからない、異性愛よりも恋愛の成就が困難だという部分もあるので、普通でありたかった、普通に恋愛がしたかったというのはありますね。

・特に日本はまだ異性愛が普通という考え、女性はこうあるべき、男性はこうであるべきというのが強い。それほど他人は問題だと思ってはいないのかもしれないけど、常識や普通から抜け出すことが怖いというか…。

― 受け入れるまでの道のりの中で普通という概念に葛藤するということですね。

・普通というのはセクシャルマイノリティだけでなく他の場面でもありますよね。普通からそれていると、説明を付け加える必要があったり、人に言うことすらはばかれます。自分に置き換えても普通であるのがどんなに楽かよく分かります。

― 私も今身近な数人には自分のことを打ち明けているものの、会社で言えるかといえば、やっぱり言えないですよね。LGBTがもっと世の中で、身近に普通の存在になれば、もっと変わっていくと思いますよね。

Q:若い世代の方の間では、LGBTを知っていて、その存在を普通と捉えている人も多いですね。今後セクシャルマイノリティの将来はどうなっていくかと思いますか?

・近くに当事者がいることはすごく大きいですよね。理解が進みます。LGBTという言葉は知っているけど、当事者が近くにいないと自分事にとらえない人は多い気はします。

・理解して受け入れてくれる人を増やすにはカミングアウトしやすい環境が必要だと思いますが、どうなればカミングアウトしやすい環境か…、難しいですね。

― LGBTへの理解は、活動をしている方々のおかげでこの10年を見ても進んでいる通り、やはり地道に団体や個人が発信し続ける必要があるということですよね。飯田さんのように理解をしてくれる人がいれば、すごく当事者が話しやすいと思うし、飯田さんのようなアライが増えればどんな場所でも気兼ねなく打ち明けられると思います。

 

(イタンビュー 2021年12月22日)

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